INTERVIEW:アイドル歴10年以上の TEAM SHACHIが語る「ファン層の変化とパフォーマンスの進化」
- ヤマグチヒロシ
- 2024年7月4日
- 読了時間: 10分
更新日:2024年7月5日

TEAM SHACHIに話を聞きたくなった訳
TAP 99読者の方々は<TEAM SHACHI(チームシャチ)>というアイドルグループをご存知だろうか?ももいろクローバーZや私立恵比寿中学に続くスターダストプロモーションの姉妹グループとして<チームしゃちほこ>というグループ名で2012年にデビュー。名古屋発のグループとして現在も精力的に活動している。
私は過去に所属していた某メディアでいろんな縁から2014年頃から密着取材をしており、初めてのアルバムリリース、全国ツアー、そして初の日本武道館での単独公演など破竹の勢いという言葉がぴったりはまる彼女たちの活躍を文字にして伝えていた。エッジの効いた楽曲たちを引っ提げ、用意された難題を乗り越えながら2010年代のアイドルシーン、J-POPシーンを駆け抜けていた。
前職を退職して、たまにライブに足を運ぶこともあったが、生活環境の変化やコロナ禍などもあって、彼女たちの活躍は遠巻きに見るようになっていった。(たまに大量に音源送りつけてくれていたシャチファンの皆、あの時はありがとう!)が、最近たまたまSNSで彼女たちのライブ映像を見て「え?すごっ、なんか別グループじゃね?」と驚いたのだ。
確かにメンバーは減り、なんならグループ名が変わっている。というわけではなく、あの頃とはまったく違うパフォーマンスをしていたのだ。それはアウェー会場での盛り上げ方だ。ダンスが上手い、歌が上手いということよりも表情ひとつ、目線や、動き方、煽りなどが現場の熱気を感じながら最善の一手をしているような。
なんだかとっても気になってしまい、TAP 99というメディアをやってるんだから話を聞いてみようと思う。元気してた?なんでライブそんなに上手くなったの?アイドル10年以上続けるってどんな感じ?いまのアイドルシーンはどう見えてる?聞いてみたいことはたくさんあった。
アイドル歴10年以上で感じるファン層の変化
ヤマグチヒロシ(以下:Y):おひさしぶりです。以前の仕事で長期密着をさせていただいていましたが、取材としては2015年の愛知・蒲郡ラグーナテンボスで開催された【しゃちサマ2015】が最後でした。その後もライブなどでご挨拶することはありましたが、現在の体制に変わってからは初めてお目にかかります。

一同:ほんとに・・・!?わーお!
秋本帆華(以下:秋本):10年、9年ぶり・・・
咲良菜緒(以下:咲良):うれしー!
坂本遥奈(以下:坂本):友達で久しぶりに会う時の話題でも1年ぶりくらいなのに、9年って話すこと多すぎるでしょ(笑)
Y:デビューからもう12年経って、皆さんがまだ続けていることがすごいことだと思いました。これまでメンバーの卒業や、改名などありましたが、周囲の反応はどうでしたか?
咲良:<チームしゃちほこ>の頃は「ちっちゃくたって名古屋嬢」という自己紹介のセリフがあったんですけど、改名のタイミングで、改めて会う方や、2度目まして方に自己紹介をする際に「私たち、チームちゃちほこでした。」と加えて説明していて、2つのグループをリンクさせるのに苦労しました。
秋本:改名して2年くらいは「チームちゃちほこだったTEAM SHACHIです」ってフェスやモールでのリリースイベントの時は毎回伝えるようにしてましたね。
大黒柚姫(以下:大黒):改名したタイミングは<TEAM SHACHI>と書いて「シャチ」と読みますだったから、それを伝えるのに苦労したんです(笑)

秋本:2022年のアルバム『TEAM』を出す時に「チームシャチ」の読み方を解禁しました。
大黒:そこから読みの苦労はなくなったね。
坂本:コロナ禍からイベントに出たりすることができなくなってしまったので、そこから年数が経ってしまって<チームしゃちほこ>という名前を使うことも少なくなっていました。距離の近いスタッフさんや、関係者の方には使うこともあるけど。
Y:実際に<チームしゃちほこ>という名前を使わなくなったのはどんなタイミングですか?
咲良:コロナでアイドルファン層がガラっと変わったんです。<チームしゃちほこ>を知らないお客さんがいるフェスに出ることが多くなったので、そのタイミングかも。イベントのスタッフさんたちの中には観てくれていた人もいたので「しゃちほこだったんだよね。」「10年前ここで会ったんだ。」と伝えてくれる方もいます。
Y:ファン層の変化というのはどんなものでしょう?
秋本:SNSでバズりやすくなって、これまでよりも若い女子高生世代の子たちが目立つようになりました。アイドルを憧れの対象として観てくれています。変わらず男性の方もたくさんいらっしゃるんですけど、変わりました。
“かわいい”が追求されるシーンと今だからできる自分たち“らしさ”
Y:その状況でパフォーマンスなどに変化はありましたか?

咲良:コロナ禍が明けて声出しがダメなイベントが多かったから、そのタイミングで“観てて楽しい”、“観てて可愛い” アイドルちゃんが一気に増えましたね。私たちは(一緒に踊るような)“参加型”でずっとやってきたから、曲選びも難しかったです。だけど、今は声を思いっきり出すようなアイドルが少ないので、逆にそれを見せて行こうって感じで今は“らしさ”も全開にしてます。
Y:コロナを乗り越え、アイドルシーンも変化を体感しているようですが、たくさんのグループが更に増えてきた現状を10年以上活躍してきた立場でどう見ていますか?
秋本:フェスがめっちゃ増えたよね。10年前とは比べ物にならない。
大黒:そうだね。アイドルフェスが多いね。
秋本:いろんな場所で、いろんな会場でアイドルフェスが行われてる。私たちも今年だけで結構出してもらえて、知ってもらえる機会が増えたと思います。
坂本:10年経ったいま、アイドル始めて1年目や2年目の10代の子たちを見て「過去の私たちって、こうゆう風に見えてたのかな?」と客観的に思えるようになりました。若さの武器というか、始めたてだからこそ出来たこと、そして、年数が経ってわかってるからこそ出来ることが違うんだなと思います。
Y:若い後輩たちはどうですか?
坂本:昨日、FRUITS ZIPPERちゃんたちの武道館ライブを観させていただいたんですけど、お客さんの層も若くて、女の子たちがすごく多くて。
で、その女の子たちが“可愛い”!張り切ってデートしに行くような感覚でライブに来てますね。男性アイドルのライブを見に行くような女の子たちが多くて。
大黒:私たちのファンの子達もちゃんと美容院に行ってヘアセットしてからライブやイベントに来てくれたりとかね。
坂本:アイドルのライブ現場というよりショッピングに来た感覚のおしゃれな女の子が多くてびっくりします。
Y:シャチの現場でそんなオシャレな女の子たちは参加して踊ってるんですか?

大黒:これまではTシャツを着て一緒に汗をかいてタオルを巻いて踊ったりしてくれているファンの方が多かったけど、女の子たちはリボンがついた可愛いお洋服で、ペンライトじゃなくていわゆる推しうちわや、ボードを作ってきてくれて。
咲良:ほんとに男性アイドルのファンと同じ状態。
大黒:私もアイドル好きなので、よく現場に行ったりするんですけど、女子受けするようなグッズが増えました。アクリルスタンドだけじゃなくて、それを入れるケースもお布団になってたり、お家になってたり。
坂本:男女関係なく“かわいい”が追求されている感じがします。
秋本:FRUITS ZIPPERちゃんたちも「衣装は〇〇さんに作ってもらいました」「髪飾りは〇〇さんに作ってもらいました」って衣装チェンジの度に紹介していて、ファッションも取り込まれてる。
パフォーマンスが進化した理由とは?
Y:今回話を聞きたくなったきっかけの一つに、SNS等で見た皆さんのパフォーマンス映像で昔見ていた頃とは桁違いに“上手いなー!”と思ったんです。
一同:嬉しー!
坂本:変わってては欲しいけど(笑)
咲良:安心した!
大黒:変わってて良かった!
秋本:嬉しい。
Y:私たち上手くなったんだぜー!と言えるようなきっかけはありますか?
一同:えー!
大黒:ないなー(笑)
咲良:上手くなったっていう自覚がないよね。

坂本:回数やってきたってことは大きいかなー。
咲良:二十歳になるタイミングで楽曲の方向性とかもチャレンジさせてもらって、これまでの元気いっぱい以外で、いろんな曲をやらせてもらって幅が広がりました。でも、その度に「ムズイって!」「なんだこの歌、やだよー!」「ここのパートになってほしくない」とか言いながら(笑)毎回挑戦させてもらったことかな。
大黒:はっはっはー(笑)
秋本:毎回壁登ってたわ、そういえば・・・(笑)
咲良:昔からそうだもんね。「こんな声出ないー」とから言いながら気がついたら出てたみたいなことが多かった。
Y:私が密着していた10年前は「アイドル5年」と言ってましたが、気づけば12年。ここまで続けてこれたモチベーションってなんでしょうか?
咲良:アイドル5年!もう2回やれる(笑)
大黒:なんなら3周目入ってる(笑)
秋本:常に目標があったというのは大きくて、今は「もう一度武道館に立ちたい」という目標ができて。これだけ長いことやってると、それぞれ色々と考えるタイミングがあったと思います。私は裏でも表でもずっと笑っていられるこの仕事が好きだったから続けてこれたのかなって。常に笑っていられる仕事はなかなかないと思うので。
咲良:でも、私たちにも曲によってカッコいい表情をしなきゃいけなくなった時期があったんです。それで、写真を撮る時に“クールな”、“アンニュイな”って、ちょっと大人になったタイミングの私たちを求められることがあって、(秋本が)すっごい苦労してたのを思い出しました(笑)この人が笑うから集合写真がダメになることも・・・
大黒:そのほーちゃんが変わった転機はマラソンかなー?2021年に名古屋の伝統ある大会ではじめてフルマラソン走って。帰ってきた時に昨日見てた顔と違ったんです。逞しくなって。私たちも感動して、そこからパフォーマンスが変わった気が・・・
秋本:そーなの!?
大黒:それが終わってパシフィコ横浜のライブがあって。フルマラソンの時の気持ちを歌詞にした(秋本の)ソロ曲「まってるね」って曲があって、そこからな気がする。
咲良:振り幅が一気に広がった。
秋本:確かに(笑)ここまで私って頑張れるんだって。自分が思っていた限界がもっともっと上までいって、もっと行けるなって思えるようになりました。
大黒:一皮剥けましたって表情で帰ってきたんです。
秋本:みんながゴールで待っててくれたんです。
大黒:スタートからどこを走ってたか追えたので、ずっと見ながらゴールで待ってました。
Y:じゃあそのマラソンがパワーアップしたきっかけの一つということなら、あと3回きっかけが残ってますね・・・

咲良:マラソン基準なのー?(笑)
坂本:ほーちゃんが用意されてただけであって・・・
大黒:私たちのパワーアップのきっかけがマラソンだけとは限らないから!!でも、挑戦するだけでもすごいのに、走り切ったのは本当にすごい。
秋本:メンバーが待っててくれてると思ったら頑張れた。
咲良:ただ、思ったより速くて・・・。私たち待っている側も撮影とか配信だったりいろいろあったんで、事前の練習を見て決めたプランを組んです。でもよっぽど私たちのことが好きなのかペースがめっちゃ速くて(笑)
大黒:フルマラソンって少しずつペースが落ちていくものだって聞いてたんですけど、ずっと一緒。
咲良:各所にカメラがあるんですけど、ずっと同じ笑顔で・・・。ファンも配信で見てるから明るくしてるけど、そろそろしんどいかな?って心配して都度チェックしてたけど、毎回同じ笑顔!デジャヴ!しかもわざわざカメラの前まで近づいて「いえーい!」って(笑)!
秋本:コロナ禍で沿道の応援がダメだったので、絶対アピールしたいなと思って。地図も頭に入れて、どの地点にカメラがあるから必ず寄っていこうと。
咲良:全カメラ皆勤賞だったよ。めっちゃ笑ってたし。それも感動ポイントじゃなかった?
坂本:いつもほーちゃんは「頑張った」って自分から言わないけど、終わったあとに「あぁ、わたし頑張ったよ・・・」ってひとりで言ってるのを見て感動。マラソン中、ずっと笑ってたから、どうなんだろうって思ってたけどちゃんと身体に負担くるじゃんって。そんな中、笑顔で頑張ってたんだなと。
彼女たちの進化と共にアイドルシーンも女性ファンの増加などこれまでと状況が変わっているようだ。後編では今の彼女たちが仕掛けるセットリストについてや、過去の過ち?を振り返りながらアイドルとして生きていくことを決めたタイミングなどについて聞いていく。
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