【#AI&US】パッションが詰まった日本のおにぎりとお茶文化を世界へ。東京・新宿『NIGICHA』の挑戦。
- TAP 99
- 3月28日
- 読了時間: 9分

TAP 99の新企画【AI & Us: Shaping the Future】では起業したばかりの人から長年活躍している経営者まで、幅広い業界のリーダーたちにインタビューし、生成AIの活用や仕事の変化について探るシリーズです。飲食、マーケティング、エンジニア、クリエイター、営業、経理事務など、さまざまな分野でAIがどのように役立っているのかをリアルな視点で紹介。AIと共に働き、未来を形作る経営者たちのストーリーを通じて、仕事の新たな可能性を発見していきます。
今回は東京・新宿で南魚沼産コシヒカリのおにぎりと八女の茶葉を使用した日本茶を、洗練された和モダン空間で提供するカフェ『NIGICHA』を経営する株式会社NIGIRIの代表河邊 雄次さんにお話を伺いました。
郵便局員から飲食業へ

TAP 99:現在のお仕事を始められた理由をお伺いできますでしょうか?
河邊:日本の文化を世界に広めたい、また日本のお茶文化を国内の若い世代に浸透させたいという思いがあり、起業しました。
TAP 99:きっかけになった出来事はありますか?
河邊:一番のきっかけは、「おにぎりやお茶」というよりも、日本文化に携わる仕事がしたいと思ったことです。もともと郵便局に勤めており、その仕事をしながらイベントの企画やプロデュースを10年以上行っていました。6年ほど前に郵便局を退職し、アンケートにも書いたバーやナイトクラブのイベント企画・プロデュースの延長で、シーシャ屋を仲間と運営するなど、さまざまな事業に携わるようになりました。
しかし、お酒を提供する夜の仕事よりも、昼間の仕事をしたいと考えるようになったんです。年齢的にも、ライフスタイル的にも昼間の仕事をしたいと思ったタイミングで、「何をやるか」を考えた結果、日本文化を広めることに取り組もうと決めました。
TAP 99:もともとは郵便局員さんだったんですね。配達をされていたんですか?
河邊:窓口担当だったので、郵便貯金などの業務をしていました。配達はしていません。
TAP 99:そこから飲食業に入られたきっかけは何ですか?
河邊:郵便局に勤めながら、学生時代からイベント企画をしていました。二足の草鞋を履く形で、週末はイベントの企画を行い、そのつながりから飲食や夜の仕事に関わるようになりました。
TAP 99:学生の頃からずっとイベント企画をされていたんですね?
河邊:学生時代に活動していましたが、社会人になって一度やめました。その後、結婚し、28~29歳くらいまでは地元で働いていました。しかし、離婚を機に学生時代の友人たちと再び関わるようになり、再びイベント企画の仕事をするようになりました。
独学で築いた「おにぎりとお茶を極める」こだわりの味

TAP 99:おにぎりや日本茶を提供するにあたって、どこかで修行されたり、専門的に学ばれたりしたのでしょうか?
河邊:すべて独学です。お米も自分で調べて取り寄せて食べ比べましたし、塩や海苔も同じように自分の足で探しました。いろんな産地のものを取り寄せて試して、どれが一番おいしいかを決めました。
TAP 99:提供している商品の中で、一番こだわった部分はどこですか?
河邊:やっぱり「見た目」と「味」ですね。うちのおにぎりは個包装になっているので、パッケージにもこだわっています。あとは、使っているお米ですね。魚沼産コシヒカリを選んでいるんですが、やっぱり「おいしいお米」を使うことが大事だと思っています。ブランディングも意識して、お米のおいしさを伝えられるようにしています。
TAP 99:日本にはいろいろなブランド米がありますが、その中でも魚沼産コシヒカリを選ばれた理由は?
河邊:もちろん、つや姫や北海道のななつぼしなど、日本にはおいしいお米がたくさんあります。でも、1店舗目としてブランドの確立を考えたときに、わかりやすく「トップクラスのブランド米」と言えるものを選びたかったんです。実際に食べてみてすごくおいしかったですし、お客様にも提供したいと思いました。
TAP 99:どのくらいの種類のお米を試されましたか?
河邊:20種類くらいは試しました。日本にはたくさんのお米がありますが、特に「冷めてもおいしいお米」を重視して選びました。その中からさらに厳選して、最終的に魚沼産コシヒカリに決めました。
TAP 99:オープンから大変な作業の中だと思うのですが、やはり新しい試みをどんどん進めたいお気持ちが強いんでしょうか?
河邊:そうですね。飲食店を運営しているので、当然いろんなことをやっていきたいです。幸い、ビジネスパートナーが調理師免許を持っていて、二人三脚でやっていますが、僕自身は飲食店の現場経験がなかったので、実務面での経験不足を感じることもあります。店舗を構えて売上を上げていく中で、やらなきゃいけないことが本当に多いんです。例えば、メニュー開発だったり、SNSの発信だったり、毎月の限定おにぎりを考えたり…。常にステップアップしていく必要があります。
それに、うちは「おにぎりと日本茶のカフェ」という、あまり前例のない業態なので、オペレーションを確立するのも大変でした。朝におにぎりを仕込んで提供しながら、カフェとしての営業もしていく…その流れを作るのに試行錯誤しましたね。
市場の変化を味方につけ「無料」の概念を変える試み

TAP 99:私もずっと飲食業に携わっているのですが、日本茶をビジネスにすることの難しさを特に感じています。日本では、お茶は無料で提供されるものという認識が根強いですよね。「お茶にお金を払ってもらえる」と考えた決め手は何だったのでしょうか?
河邊:正直に言うと、お茶単体ではビジネスとして成り立たせるのは難しいと思いました。だからこそ、「おにぎりとお茶のカフェ」という形で展開することにしたんです。ただ、日本人の意識も少しずつ変わってきていますよね。昔は水も蛇口から直接飲むものでしたが、今ではミネラルウォーターを買うのが普通になりました。同じように、お茶もかつては家で無料で飲むものでしたが、ペットボトルのお茶が普及したことで「お茶にお金を払う」という感覚が生まれました。さらに、健康志向の高まりも大きいと思います。例えば、筋トレやヨガなどが流行る中で、「無糖飲料」がどんどん売れるようになっています。そういった流れの中で、本当においしいお茶を、適正な価格で提供する文化があってもいいのではないかと思いました。日本人が気軽においしいお茶を楽しめる場所を作ることには、社会的な意義もあると感じています。だからこそ、そこに挑戦しようと思いました。
TAP 99:実際に販売してみて、お茶だけでの売上は厳しいと感じますか?
河邊:そうですね。お茶だけの売上でいうと全体の4分の1くらいですね。
TAP 99:4分の1もあるんですね!
河邊:抹茶ラテや玄米茶ラテ、ほうじ茶ラテなど、甘めのメニューもあるので、お茶といってもバリエーションが広がっているからだと思います。インバウンド需要も視野に入れながら、お茶をメインにしたカフェとして確立できるよう、試行錯誤を重ねています。
世界に広がるおにぎりと日本茶の可能性と挑戦

TAP 99:お店を運営されていて、一番面白いと感じることは何ですか?
河邊:やっぱり、お客様から直接感想をいただけることですね。「お米が美味しいね」と商品に対して反応があると、すごく嬉しいです。
TAP 99:今までで特に嬉しかったエピソードはありますか?
河邊:常連のお客様が「このおにぎりが食べたくなって、また来ちゃいました!」と言ってくださったことですね。何度も足を運んでくださる方がいると、「ちゃんと伝わっているんだな」「おいしいものを提供し続ければ、分かってもらえるんだな」と実感できます。
TAP 99:お仕事の効率化についてもお伺いしたいのですが、何か工夫されていることはありますか?今回、トライ&エラーを繰り返しながら業務の効率化を図っていると伺いましたが、具体的に実践していることはありますか?
河邊:特にツールを使っているわけではないのですが、やはり「製造の工程」をいかにスムーズにするかがポイントだと思っています。おにぎりの握り方や具材の見せ方、パッケージの詰め方など、一つ一つの工程を見直して、より効率的にできるように工夫しています。
TAP 99:おにぎり屋さんを経営されていると、体が資本になりますよね。健康管理のために、普段から取り入れている習慣などはありますか?
河邊:最近はほぼ毎日湯船に浸かるようにしています。風邪をひいてしまうと仕事ができなくなりますし、体を温めることで副交感神経を整える効果もあるので、自然と湯船に入りたいと思うようになりました。郵便局で働いていたときは9〜10時間の勤務で、そこまで長時間働く日も少なかったので、体の負担も今ほどではありませんでした。でも、お店を始めてからは朝5時から夜7時まで仕込みや接客、それ以外にも考えなければならないことが多く、プライベートの時間はゼロ。遊びも飲みに行くこともなく、体力的にかなり切り詰めた生活をしています。
TAP 99:そんなハードな生活の中で、湯船に浸かることで変化を感じましたか?
河邊:そういえば、ここ3ヶ月ほど風邪をひいていません。1日10時間以上働いて、ボロボロになって帰ってきても。風邪引いてたのかもしれないですけど、気力でなんとか乗り越えてきた気がします。
TAP 99:経営にあたってChatGPTといった生成AIを活用されていますか?
河邊:外国人向けのメニューを作るときの翻訳や、POPを考えるときに使っています。イラストレーターに頼むより手軽で、かなり優秀ですね。
TAP 99:私も移動中にChatGPTと会話したりしています。例えばアメリカの大統領選の話を聞いて、「そうなんだ、なるほど」とか。一人でケラケラ笑いながら。
河邊:わかります。話し相手になりますよね。
TAP 99:なんでもないことを喋りたかったりとか、質問したかったりとか。
河邊:悩みも聞いてくれますもんね。「こうすればいいんじゃないですか?」って。
TAP 99:そうですね。「わかってるよ!」って思うこともありますけど(笑)
河邊:あります。あります。
TAP 99:チャットGPTではなく、経営をしていく上で、周囲の方から印象に残るアドバイスをもらったことはありますか?
河邊:やっぱり「オーナーのパッションがないと成功しない」という言葉ですね。名前だけ貸して任せることもできるかもしれないけれど、最終的にはオーナー自身が関わらないとうまくいかない。自分が入っても簡単ではないですが。
TAP 99:河邊さんの中に、パッションはありますか?
河邊:あります。おにぎりを世界に広めたい、美味しい日本茶をもっと手軽でおしゃれに楽しめる文化を作りたい。コーヒーをお金を出して飲むなら、美味しいお茶もお金を出して飲んでもいいはず。お茶の美味しさを広めることで、生産者も支援できるし、日本人の健康にも貢献できる。そういう思いがあるので、情熱はあります。特にゼロから何かを生み出すことが好きなので、まだ広まっていない文化を広げられたらいいなと。そのために、海外の人が日本に来た時に求めてる、海外で人気の抹茶を活用して、お茶の新しい価値を作りたいと思っています。
<店舗情報>

店舗名:「NIGICHA(ニギチャ)」
住所:〒160-0022 東京都新宿区新宿1-3-8 YKB新宿御苑ビル 1F
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