佐世保の人とカルチャーが心地よく交わる場所。【Sputnik(スプートニク)/cafe mellow(カフェ メロウ)】
- 山本千尋
- 2024年1月16日
- 読了時間: 8分
更新日:2024年4月2日

佐世保市街地から車で25分程度の広田1丁目。住宅やショッピングエリアが立ち並ぶ賑やかなエリアから静かな川沿いを歩いた一角に「Sputnik(スプートニク)」はあります。カフェ、フラワーショップ、古着店、共有文庫や写真スタジオからなる複合施設です。オーナーは、1階の「cafe mellow(カフェ メロウ)」を営むリョージさん。おヒゲとタトゥーが素敵なリョージさん、Sputnikのこと教えてください。美味しいランチとスイーツを、カウンターでいただきながら。
旅の道連れ、同伴者

リョージさんは、小佐々町(本人曰く、リトル・サザ)出身。ファッション、古着、音楽など、長年佐世保のカルチャーにふれてきました。もともと「cafe and bar LAST(ラスト)」のオーナーでもあり、男女共に多くのファンを持つ兄貴分的存在です。
オープンして4年目になる、「Sputnik(スプートニク)」のこれまでについて聞きました。
「まず、店名の由来は? ってなるだろうから言うけど」と、リョージさん。こちらの動きがバッチリ読まれていました。さすがです。

店名の「Sputnik」はスペースシャトルや人工衛星にも使われている言葉で、ロシア語で“付随するもの”の原義を持つのだそう。
「昔から好きな単語で、なんかずっと頭のなかにあって。衛星の名前だったりその、回ってるじゃない。付随してる。それが転じて、一緒に旅するとか、同行者とか。そういう風に言われてて。いろんな人たちが関わってこの場所を盛り上げていってほしいなって。一緒に頑張っていく同行者。一緒に旅をする人たちってことで、めっちゃ良いじゃんって」
現在、リョージさんと一緒に旅をしているのはフラワーショップ「marble flower」、古着店「FUEL」、「屋根裏文庫」、フォトスタジオ「bande photo」。

もともとLASTの常連だったり繋がりのあるショップなど、縁があって集まってきた人たちです。
「ほんとうに、いろんな人たちの助けがあって。無事に引き継いでやりますってなって」
Sputnikの前身は「TESORA」という、佐世保でめちゃくちゃイケてる古物ショップ「Mixer(ミキサー)」の姉妹店でした。
その初期テナントで当時は“同行者”側だった「cafe mellow(メロウ)」の立場が大きく変化したのは、オープンして3年後。コロナ禍をきっかけに、前オーナーからリョージさんへお店が引き継がれることになったのです。
お客さんのために、まだ頑張れると思って
「俺も、ちょっともうどうしようってなってた時期だった。LASTもお客さん全然やし、でも、昼間はmellowに来てくれてて」
権利金などの出費をはじめ、コロナ禍でさまざまなリスクを抱えた上での店舗譲渡は、もちろん二つ返事では進みませんでした。
「ちょっと考えさせてくださいって。けど、お店がなくなるかもしれないって常連さんとかにも話してたら、店を始めた以上、自分の意志でやめるのに踏ん切りがつかなくなった。お客さんのこと考えたら、なんか簡単に閉めれないなと。頑張れるなら。頑張って頑張って無理だったらいいけど、まだ頑張れるんじゃないかと思って」
銀行の融資など資金繰りも厳しい中、多くの人に助けられながら「Sputnik」は無事にオープンしました。

「とはいえ、建物全体をカフェにするってのはあまりにも贅沢な使い方だし勿体無いってことで、今の出店者さんに声掛けさせてもらって、自分たちのタイミングで出てもらっていいというのを条件に。面白そう!って、皆んなそんな感じ。でもエアコンが入ってなかったから、夏はクソ暑いし冬はクソ寒い。そこは内装もう一回入ってもらって、内屋根作って断熱材も入れて、中二階も壁を作ってエアコン対策を。設備とかそういうのも補助金であったから。そのときに友人の会社にもお世話になった。『こういうのやりたいんだけどどうしよう』って知恵をお借りして。ほんとうに、いろんな人たちの助けがあって。無事に引き継げました」
「外の看板のロゴは、友人のデザイン。『ちょっとお願いできんかな』って。もうバチコンなやつ作ってくれた。何回か打ち合わせて。『フォントは柔らかいのがいい』って、そのぐらいかな。好きなアーティストのジャケットで使ってるフォントとか見て、こんな感じのやつ!って。デザインはこんなして、っていう指定だけして。コーネリアスの『FANTASMA』ってアルバムジャケット。いまはミモザが伸びて。そろそろ切ろうよ、って」

新しい同行者を連れて再び旅立ったSputnik。気がつけば、ミモザが伸び伸びと育つほど穏やかな時間が流れていました。
ああ、それにしても、今食べている「ローズマリーのハンバーグ」が本当に美味しい。メロウの料理はスタッフのさやさんが担当していて、どれも食べ応えのあるカフェご飯です。

「さやちゃんはもともとLASTの常連さんだったんだよ」
ここにも同行者がひとり。
mellowな空間と時間と

ちょっとここでブレイク。「cafe mellow」の話題に移りましょう。
ここは、先述したSputnikの前身・TESORAから7年オープンを続けているカフェ。
リョージさんがハンドドリップで淹れたスペシャルティコーヒーが味わえます。

お料理好きなスタッフ・さやさんが地元食材で作るカフェご飯や、オリジナルスイーツも人気です。
「mellowは、よく音楽なんかで使われてるメローミュージックとかそういう。昔からことばの響きとか好きで。音楽の雑誌とか番組でちょいちょい見てたんだけど、雰囲気だけは知ってるけど、あ、こんな感じなんだって。でも言葉の意味ってなんだろうって調べたの。“やわらかいもの”とか、でもそれって人にも使える。“やわらかいひと”みたいな。物腰の柔らかいmellowな人って。俺、コーヒーはやわらかい口あたりが好きだから、トゲトゲしてるような味はあんまり好きじゃないから。だったら、何事でも俺そういうのがすきだから、じゃあmellowって良いなって付けた」
イームズやヴェルナー・パントンなど、40〜60年代のミッドセンチュリー家具に彩られた店内のインテリアにも、リョージさんの並々ならぬこだわりが。なんとその一部は私物なのだそう!
「ライトとか椅子とテーブルのセットとか、ポスターとかも家から持ってきて。嫁には何も言ってなかったから、オープンした時に嫁が『あれ?なんか、どっかで見たことあるやつがいっぱいあるなぁ』みたいな。ぎりぎりオープンの時に持ってきた」

Sputnikの店名から、近未来的な色味や素材を使ったスペースエイジも取り入れているそう。
「第一はお客さんがくつろいでくれること。オシャレすぎて緊張しちゃうのは本末転倒だから」
そのポイントは緊張と緩和のバランス。
「壁紙とかも、70年代のやつって。全部これにしようかとおもってたんだけど、全部これにしちゃうと疲れそう。オシャレ感が押し付けがましいと思って。じゃあ半分は、この板張りのやつにしようかなって2色で色合いを出してるんだけど。これは、(スタッフの)さやちゃんと俺が塗って。むき出しなところも良いよね。本当だったらさ、こういうライトの線とかも白とかなんだけど、オレンジにしてって。家具と合うように」

「(お客さんに)インテリアに興味持ってくれたら。店内で流れてる音楽や使ってるグラス、マグカップや食器だったりにも。……ボクが思うカフェって、安心できる場所だって思ってるんで……」
情熱大陸のKing Gnuですね。
「ヌーって、群れで行動するんですよね。群れで、ガーッと、行動するんですけど、バンドとして、その勢いで行こうかなって思って……。あっ、ごめん!なんか降臨してた!」

「カフェってくつろげもするし、お店の人と話して刺激得れたりとか、そこでイベントとかもやったりとかそういうの見て刺激受けたりとか。そういう場所かなと思うし」
スタッフのさやさんのように、実際に一人のお客さんの人生変えてるわけですからね。カフェやバーのお仕事って、人の出会いを作る場所でもあるんですね。
Sputnikのこれから

Sputnikが走り出してから4年。オープン後には、TESORA時代のお客さんが少し離れてしまうなどのギャップに戸惑うこともありつつ、新しいお客さんの風も感じているとのこと。
きっとどこでもそうなのかもしれないけれど、佐世保人の特徴として“新しいもの好き”があります。
新テナントも入り、mellowでもランチを開始するなど新しい試みを行ってみるも、あっという間に熱が通り過ぎていく感じ。一過性のものとも言いましょうか。
「自分のやりたいことが浸透するにはまだまだ時間がかかるよねって思った」
色んな人たちが関わってSputnikを盛り上げていきたいというリョージさんの想いは、少しずつ実を結びつつあります。
これまでショップ運営以外にも、結婚式場や絵の展示、ポップアップストアとして活用されたこともありました。
「一番のウリは、他のところにない空間だと思ってるから。お花屋さんもあるしスタジオもあるし、飲食店もあるし。そしたらそういうこう、結婚式とか披露宴とかできるよねーって。なんかそういうのもっと増えて行ければいいなと思う。本当に良い式だった、常連さんでここでやりたいって人がいて。プランナーさんと話して、うちでしかできないような式になったんじゃないかなと思う。色んな可能性がある場所だなと」

最近では、古着店「FUEL」が中二階にオープン。オーナーはLASTのお客さんで、2店舗目の出店に悩んでいたところ声を掛けたそう。
若者たちのチャレンジの場を提供することにも一役買っています。さすが兄貴です。
15年続くLASTで培ったベースをもとに、もう一つの拠点Sputnikではまた違ったことがやれていると話すリョージさん。
そんな彼が待つこの場所は、いつでも新しい旅への可能性に満ちています。

【施設情報】
sputnik(スプートニク)
住所:長崎県佐世保市広田1丁目36-37
定休日:木曜日
【店舗情報】
cafe mellow(カフェ メロウ)
住所:長崎県佐世保市広田1丁目36-37
定休日:木曜日
[営業時間]
ランチ:11:30~14:00 L.O.
カフェ:12:00~18:00
※ランチ営業についてはインスタでお知らせをしております
※駐車場は台数に限りがありますので、乗り合わせでのご来店をお願い致します。